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すうさい堂の頭脳偵察~ふざけてません。

すうさい堂は閉店しました。17年間ありがとうございました。

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ひどい話コレクション



わ。トランプ当選。それまでトンチキな不動産屋みたいなイメージだったのですが、一夜明ければ米大統領。
優勢はマジだったんか、とちょっと驚く。なんでもレッドネックとかの最貧層からの支持をかき集めたらしい。
「はぁオラたちの王様だぁ~」ということらしい(らしい、らしいってすいません。実はあまり知らない)。
すでに「お前が大統領じゃヤだ」と、デモも起こっているという。まあ日本でもおんなじよーなのがいるからなあ。アベちゃんも少々やりにくかろうと思うとそこだけは面白い。
写真から「品格」とか「人格」がまったく見えてこないってのがすごい。柄にもなく「ゴッド・ブレス・アメリカ」とか思ってしまったわけだが、そういえばそんなタイトルの映画みたなー、よく考えたらひどい内容のばっかりみてるなー、とは思うものの、そこに何か教訓めいたものはあるはずなんである。ひどい話コレクション、いってみよーという備忘録。

『ゴッド・ブレス・アメリカ』(2012)。何から何まで類型的なのだが、狂っていて好き。
セクハラ容疑で会社をクビになり、脳にも腫瘍が見つかったおっさん。家族との復縁もままならない(ママにはイケメン彼氏が出来て娘は超ワガママに育ちました)。
絶望して自殺しようとするがテレビをつけると低俗なバカばっかり。ん?自分が死ぬよりこいつらぶっ殺したほうがよくね?と、まずタレント気取りのセレブ一家を皆殺し。
それを見ていた「世の中ムカつく!あたしも人を殺したい!」と思っている女子高生(アリス・クーパーのファン)に懐かれ、二人の殺人行脚が始まるという、ほぼファンタジーのようなお話。
テレビでバカにされている知的障害者を笑う奴らに天誅を下そうと、銃を持ってスタジオに乱入するが、その障害者もスターのつもりになっているのを見て悲しくなり、彼も込み込みで殺戮を開始。
おっさんは加勢に来た女子高生もろとも射殺されてしまうが、最後に来て「人生やり切った」感じで終わるのが大変よい。ネタバレもしてしまったことだし、不謹慎ながらも書いてしまうと「終わりよければすべて良し」である。



『ファーゴ』(96)。コーエン兄弟の作品。妻を人質に狂言誘拐を企んだ男が、あまりにも仕事が雑なチンピラたちと組んだため、話がどんどんヒドい方向に転がっていく。チンケな悪党をやらせるとスティーブ・ブシェミはその風貌が生きて光り輝く。素敵ブシェミ。ミステリ仕立てなので詳細はカット。
教訓としては「仕事する相手は選んだほうがいい」ということ。



『ネスト』(2014)。フランス・スペイン合作。姉と妹が二人で暮らしている。妹はごく普通に明るく育ち彼氏もいるが、姉はドアの外に出ると嘔吐してしまうくらいの引きこもり。
ある日、上に住むイケメンの住人が階段から転倒して怪我を負い、たまたま居合わせた姉に救援を頼む。
引きこもりだったおねーさん、「この人は天からの授かりものだわ!」と、イケメンを部屋で介護し、そのまま監禁することに決定。
その後、妹、イケメン、イケメンの婚約者などすべてに最悪なことが起こる。特に妹に降りかかる最悪っぷりはヒドすぎるので笑うしかないのだった。
この作品は現在引きこもりの人がショック療法として鑑賞すると良いかも知れない。
「それやってても、いいことはひとつもないよ」ということ。



『エスター』(2009)。子供を流産させてしまった夫婦が、代わりにとロシアで育った9才の少女・エスターを養子にするが、その子はトンデモマジキチだった!
レンタルでDVDを手に取っていたら横のカップルが「エスターって(ネタバレ)なんだよねー」とくっちゃべっておられ、自分はマンガのようにズッ!となってしまったんだが、なるべくミステリ棚で会話する際には気を使って頂きたい。
しかしこの作品、アウトラインが楳図かずおの『洗礼』にそっくり。母親や兄妹(妹は聾唖)は「あの子はおかしい」と早々に気付くが、父親だけは「そんなことない!エスターはいい子だ!」と、のんきな父さんなので、物語りはどんどん悲惨な方向へ。後半、父親に対して色じかけで迫るエスター。こんなシーンも『洗礼』にありました。
そもそも「流産したから代わりの子がほしい」という考えが実は鬼畜なのだ。チャージじゃないっつーの。
結果、「鬼が来た」というわけ。エスター役の女子が壮絶で、最もゾクリとした一本。



『アフター・ショック』(2012)。イーライ・ロスの制作・脚本・主演作。
彼の作品はホステル・シリーズなどもそうだが、「絵葉書映画」の側面もある。前半ははしゃぐ旅行者たちと共に、その土地の風景を実に美しく見せる。
登場人物はやや羽目を外しているが基本的にいい奴ばかり。だが、一転して後半、彼らは一人残らずヒドい目に合うのである。
この作品でいえばチリの大震災及び、ドサクサで「刑務所から凶悪犯罪者たちが脱走する」という二次災害。
普通の奴、いい奴、美人やイケメンも同じように、残酷な運命が待っている。「どんな人でも平等に恐ろしいことは起こる、かも知れないよ」というのがロスが作る恐怖の基本。
デビュー作『キャビン・フィーバー』(2002)も、山小屋キャンプを楽しもうとした若者たちの行く先が伝染病に侵された町であった!と。
伝染病というと、感染者は凶暴になって人を襲ったりするのかなと思うが、この作品では感染すると体がどんどん腐敗するのみなので、彼らは友達や恋人を見切って「えんがちょきった」する話でした。



『ハードキャンディ』(2006)。『スーパー!』の狂ったヒロイン・ボルティを演じたエレン・ペイジが主演ということで、鑑賞したわけです。出会い系サイトで繋がったカメラマンのジェフ(パトリック・ウィルソン)と「14才のヘイリー」(エレン・ペイジ)。
最初はダンディだったジェフが、部屋に招き入れた途端に豹変していくヘイリーに詰問されて、本性が暴かれていく。どうやら彼はロリコンらしい。
ジェフはヘイリーの友達に、なにかとんでもないことをしていた(らしい)。この辺、作中ではハッキリと描かれないのだが、ヘイリーはその敵討ちをするため、出会い系で彼を「ひっかけた」。
ジェフを拘束したヘイリーは、見よう見まね聞きかじりでタマを抜く「去勢手術」を施行してしまうのである。
この辺になるとカッコいいおじ様だったジェフが泣き叫んで懇願し、普通の情けない親父と化す。
非常に面白い。ってあれ、また女の子の味方してるな。
ヘイリーがジェフを追い詰める会話で「私がマイナーなバンドの話をすると、あなたは必ずチャットの間が空く。その返事はアマゾン・ドットコムのコメントと同じだった」というのがある。
痛快だが、ネットやウィキペディアなどに頼り勝ちだと、ついやってしまいそうなリアル感。
「自分の頭で考える」というのは大事だ。そうじゃないと、陰でものすごくバカにされてるのかもしれないよ。



ということで結局、こうした作品の楽しみ方は「対岸の火事って面白いじゃん」ってことになってしまうのだが。
「あんた、暗くてグロくて後味悪くてくっだらない映画より、アイドルやかわい子ちゃんを見てるほうがよっぽど楽しいと思わないか?」とか言われそうだが、割りと自分はえーっと、暗くてグロくて後味悪くてくっだらない映画を見てるほうが楽しいです。
アイドルやかわい子ちゃんは「対岸の火事ですらない」からです。

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がんばれ欅坂



ハロウィン終了。うちのまわりも仮装親子の行列がなかなか賑やかであった。
ハロウィンは嫌いではない。まるで興味がない神さんキリストさんを讃えるクリスマスと違い、悪魔やモンスターやコミックキャラと一体化して楽しんでしまおうという、どっちかというとけしからん方向に着地するお祭りだから。真面目な日本に定着したのも少し不思議。
最近はそうでもないけど、かつては「クリスマスイブを楽しめない奴は終わってる」という圧力がとても強かった。それに対してハロウィンは、アンチからは「バカみたい。くっだらない」とバカにされているのだろうが、やってる側は「バカを承知」でやってるので、別に関係ない。非常にバランスがいい。
どちらも本来の日本に関係ないことを全力で騒いでいる。ならばハロウィンの突き抜けたバカバカしさのほうが、よっぽど清々しい。

今年のハロウィンの話題といえば欅坂46。実は今回の件で初めて知ったグループ。
ああやっちゃったねという印象。ナチス風の衣装。というか、もろナチ。ユダヤ人協会からクレームがつき、大炎上。
で、自分は画像を見て「ナチでもかわいい子はかわいい」なぞと思ってしまい、さらに禍々しいものをまとっているというギャップで「かわいさ二倍マシマシ!」などと困った感じに盛り上がって、動画を検索した。
『サイレントマジョリティー』。か、かっこいい。かっこかわいい。誰一人ニコリともしない。笑顔を売りにしない。特にフロントの女の子の凛とした存在感。軍隊のように統制されたダンス。見ようによっては非常に際どい。
で、歌詞をちゃんと聴けばわかることだがナチズムやファシズムとは真逆のことを歌っているのである。このバランスは絶対に計算されたものだ。
その辺もちゃんと汲んで欲しいですよねホントーに!
岡惚れである。この件で方向転換とかしてしまったら非常にもったいない。
アイドルグループの「隣の女の子」化が著しい昨今。同級生や同僚あるいはそれ以下。ちょっと近づきすぎじゃないか?と思っていたところへの欅坂。ほぼ爆弾。
というわけで弁護したくなってしまった。ユダヤ協会が怒るのは当然としても、ハロウィンから発生した件だし書いてしまうのだけど、日本人にとってナチスとは悪魔やモンスターと同列の、(困ったことに)親しみを感じるアイコンなんである。
かつて子供番組の敵キャラは明らかにナチをモデルにしたものが多く、実は仮面ライダーよりもショッカー派だった自分が特に好きだったのが、もろナチの「ゾル大佐」であった(彼の正体が狼男ってのもカッコよかった)。
当時はもちろんナチもヒトラーも知らないが、そうやってDNAに沁み込んでいった気がする。
イナズマンの「ガイゼル総統」(総統!)なんてさらにエグくもナチだが、その頃はなんとなく容認されていたわけだ。好きでした・・・・。
海外の残虐なシリアルキラーを、日本人からすれば例えばドラキュラのような、ダークファンタジーのように感じてしまう部分に近いのだと思う。
もちろんナチが行ったことは、最悪の蛮行である。

実はアーバンギャルドもまったく同じようなことをやっていて、キノコホテルもジャケが『愛の嵐』だったり、マリアンヌ様がブックレットでナチ帽子を被っていたりで、ちょいちょい皆さん「やりたがる」。
ただ悲しいかな存在がマイナーゆえ、あまり(まったく)大事にならない。
確かにナチ親衛隊の稲妻のような「SSマーク」はカッコいいし、制服はどこまでも洗練されている。日本の軍服なんて「反吐が出るわ」くらいしか思わないのだが。
ナチ・コレクターとしてはモーターヘッドの故・レミーさんが有名。彼の言い分がイカしていて「俺はドイツ軍のグッズが好きだが、それはデザインをいいと思っているだけだ。俺は黒人の恋人がいたこともある。だから俺は差別主義者じゃない」というもの。ザックリと清々しい。

とりあえずボスのプロデューサーも謝罪コメントを出したし、「今回はごめんなさい」で済む話。
「うっかり(本音の)差別発言」なら、社会的名士と言われている立派な方々がしょっちゅうやらかしている。
「彼女たちは自分のやっていることをまるで理解していない。嘆かわしい」と言うのならば、完全にアイドル側に罪はない。ただ着ただけだ。
学校の授業で触れただろうけど、そこだけつっこんで勉強する必要はまったくないですよね。
ま、兎にも角にも世間から注目が集まった。もちろん炎上商法?という気がしなくもない。
しかし、何かやらかして世界中から顰蹙を買うなんてのは、本来ロックンロールの役割だったはずだが、今回は日本のアイドルにお株を取られてしまった。
という意味では大変情けない話でもある。数十年前にジョン・ライドンが放った「ロックは死んだ」発言がますますリアル。
だが「アイドルは生きてる」。「今」だ!


DJ魔墓呂死



日々、郵便受けに行くのがこわい。なんかもういやあな気分になるようなもんばっかり入ってる。過呼吸になりながら郵便受けにたどり着いて溜まったチラシを捨てると残るのは、やっぱりそのまま捨てたいものばかり。溜まっていく健康保険。ね、ねね年金?ちなみにディスクユニオンの袋ならたくさん持ってるのだが。
そういうことで爆裂都市+サンダーロード大会も終了。こんなリストでした。

「セルナンバー8」バトルロッカーズ
「裕福の飢餓」泉谷しげる
「オール・ナイト・ロング」ザ・ルースターズ
「カラカラ」サンハウス
「サル」ザ・スターリン
「ワルシャワの幻想」ザ・スターリン
「シャープシューズでケリ上げろ」バトルロッカーズ
「電光石火に銀の靴」泉谷しげる
「トゥ・シューズ」PANTA&HAL
「揺らぐ街」泉谷しげる
「ルイーズ」PANTA&HAL
「国旗はためく下に」泉谷しげる
「火の鳥」泉谷しげる
「つれなのふりや」PANTA&HAL
「翼なき野郎ども」泉谷しげる

以上でした。秋はバドワイザーがうんまい!からあげクン毒とかげ味と一緒にいかがですか?!!!

そんな身体でバイク乗れんのかよ?



祝・『狂い咲きサンダーロード』プレミアム上映。もう来週だからチケットもないだろうし混雑するだろうし永野とかのどうでもいい人も出るのでスルーなのだが、通常上映になったら絶対に行く。
単館とはいえシネマートって結構でかいのだ。過去のバウスシアター爆音上映が鳥肌もんだった。あの素晴らしいビリビリをもう一度。
この作品は「パンク・ムービー」と称される。でも出てくるのは暴走族(と、スーパー右翼)だし、音楽は泉谷しげるとPANTA&HAL。
そう呼ばれる由来は抑制が効かない、あるいは解放されまくっている「仁さん」(山田辰夫)のキャラにあるのだろう。
オンとオフしかスイッチがないし(微調整の機能なし)、右翼の訓練なんてかったるくてやってられないから、捨て台詞は「長らくお世話になりましたーっと」。最後の「-っと」が大事だ。
後先考えず敵の中へバットのみで突っ込んでいく姿はもう、カッコいいのかどうかすらわからん。
ただもう、すごい。「すごいものがうつってるからすごい」という、映画を観る原始的な快感。当たり前でもある。なんで時間を割いて「市井の人の日常」なんかを有難がらなければいけないのか?
生身の人間なのに、究極の破壊紳。ターミーネーターもランボーもお呼びじゃない。いや、彼らには腕力や武力で負けるかも知れないけど、気合と殺気で勝つ!!
理詰めの人には「なんでこうなっちゃうの?」と、まったく理解できないと思う。
はねっかえりの族のひとりが言うことをきかなくて困るので、スーパー右翼(スーパーって付くのが、だっさくていい)に片手片足を切断されてしまい、殺人マシーンにカスタマイズした主人公が右翼と族上がりの警官たちに復讐するというシンプル極まりないストーリー。
大雑把過ぎる筋に対して、実は映画的な完成度(満足度)がメチャクチャ高いのだ。
それはもう「かったるいことは一切やんねーから!」と決めたかのようなカメラワークがそうだし、モッズが作ったというサントラを全部捨てて、泉谷とパンタの曲をぶっこんだ石井聰互監督の神がかり的な英断にもある。
イッちゃった目つきで仁さんがつぶやく「街中の奴らみんな、ぶっ殺してやる」。
これ以上カッコいい映画のセリフを他に知らない。
そして、見事に何ひとつ希望ってやつが描かれないのに、こんなにポジティブな気持ちにさせてくれる映画もない。
普通の言葉を使えば「奇跡の感動作」。全オレ(みたいな奴ら)が泣いた!

自分が世界一愛している映画である。
ちなみに世界一面白い映画がジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』で、世界一カッコいい映画が『女囚さそり/けもの部屋』で、世界一のコメディ映画が『悪魔のいけにえ』で、世界一のガーリー映画が『デス・プルーフ』で、世界一のアイドル映画が『太陽を盗んだ男』で、世界一のミュージカル映画が『爆裂都市』。
お粗末様でした。
というわけで時期も重なり、以前からやってみたかった『爆裂都市』と『狂い咲きサンダーロード』で使用された楽曲のみを回すDJというのをやるのであります。「狂い咲き~」オンリーだと、パンタと泉谷だけになっちゃいますので。「サ」のつくバンドのレアナンバーや、劇中歌の元ネタとかも回ります。
11月2日高円寺フォース・祝日前の水曜。詳細はこちら。
http://fourthfloor.sub.jp/
イベントタイトル『そんな身体でバイク乗れんのかよ?』は、闇ブローカーでシャブ中の小学生「ツッパリの小太郎さん(この役を子供にやらせたってのがすごい)」が映画のラストに放つセリフ。フリークの方は当然ご存知でしょうが。
自分の出番は21時半くらいでしょうか。どうだろう諸君!若い命を我々に預けてみないか!?(スーパー右翼・小林稔侍で)

あと、こちらのサイトにヂル会長が大フューチャーされています。
http://www.enjoytokyo.jp/solo/master/tatsujin12/640/
かわいーとかだけじゃなく、黒猫の持つ魔性の部分にも言及されております。とにかく、ヂルの表情が多彩。「ヂルは触って初めて良さがわかる」とは我ながら名言。




カルトムービー三題



まあしかし。あまりにも自分や店のことを書かない(書くほど面白いことがまったくない)ので、そろそろブログタイトルも変更しようかと思っておる次第。ちなみに最初期は「がんばれチヨジ日記」でした。
カルトと呼ばれる映画を三本観まして、そのうち二本はわざわざ中野ツタヤからレンタル。あそこは防犯キーが付いているので、セルフレジで知らずに帰ると悲しい結果になります。
まずはリベンジ・バイオレンスの古典として名高い『鮮血の美学』(72)。
ちょいヒッピーでフラワーな娘がならず者たちにレイプされ殺されてしまい、その犯人たちが知らずに彼女の両親の家に宿を乞う。彼らが娘を殺したことが発覚してしまい、両親が怒りの大殺戮を展開するというシンプルな話。
母ちゃんはコチンを食いちぎり、父ちゃんはチェーンソーで切り刻む。とはいえ、直接的なゴアシーンはない。
当時は衝撃的だったのだろうけど、今となってはかなりもっさり。
それでも何ともいえない変てこりんな気分になるのは、あきらかに「どうかしてる」編集というか構成。
娘を殺した犯人たちは汚れを川で落とすのだが、そこに妙にメロウなバラードが流れる。それ必要か?
のんきな警察官と鶏を運搬するおばさんとの妙に間延びしたコメディ的会話。それ必要か?
映画は陰惨なラストを迎える。そしてエンドロール。殺された主演の娘さんが楽しそうに笑っている。そこに流れる脳天気なカントリーソング。
さらに続く出演者たちの顔ぶれ。冷酷な殺人者たちも、彼らを殺さなければならなかった両親も、のんびり警察官たちも同じようなトーンでカントリーと共に流れていくので今までの悲惨な話は一体なんだったのか?というか、台無し感がすごい。そこだけなら普通に楽しい映画のエンディングなんである。
当時は劇場で観客が怒りまくったと聞くが、それはもしかして呆れるような「無邪気さ」というか「罪のなさ」に対してではないか。
制作と脚本の二人はそれぞれ、『エルム街の悪夢』と『13日の金曜日』の監督として大ヒットを飛ばす。



『悪魔の植物人間』(73年)は身体の動かない人がなんかする、というわけではない。
例によっておかしなおかしな科学者が「人間と何かを合体させたらいいもんができるのではないか?」とがんばる系の話で、今回はそれが食虫植物。
それにしてもマッドサイエンティストにゃでっかい夢がある!フランケンシュタイン博士も死神博士もハイター博士(ムカデ人間)もみんなそうだね!
冒頭を飾る「食虫植物の成長過程の早回し」が禍々しくも美しい。リアルな『遊星からの物体X』みたい。
監督は結構なキャリア組のジャック・カーディフ。

主人公は大学の講義をしながら、自分とこの学生を誘拐しては、植物との合体手術を繰り返しているノルター教授。失敗すると見世物小屋行き。教授には顔面奇形の手下(リンチ)がいて、彼が裏作業を担う。
実験が成功すれば「おまえさんの顔も治してやる」と約束されているからである。
実はこの映画の本当の主役はフリークスたちで、当時の本物の見世物スターたちが一堂に集う。
小人はもちろんヒゲ女、多毛症のサル女、ガイコツ女、脚にまったくカルシウムがない人、「飛び出す目玉」の黒人(この人マジですごい芸です。ドライアイになったりしないのかなってのが心配)、皮膚がガサガサに硬化しているワニ女など。
彼女は舞台で「私は魚鱗癬という病気で、髪の毛も生えません。でも、七人の子供の母親です」と、心温まるエピソードを語る。ということでわかるように、本作は彼らにちゃんと台詞を与え、健常者とまったく同じ「俳優」として扱っている。
芸人のひとりが誕生日なので、フリークスたちがそれを祝うパーティーを楽しんでいるシーンがある。
そこにリンチが現われるのだが、皆から「あなたも仲間じゃないの」「一緒に祝ってあげて」と言われて超ブチ切れ。場をメチャクチャにする。
リンチは他の者と違い、自分の運命を受け入れていないのだ。彼はその足で売春宿に向かい、高いチップを払い女に顔を見せて「愛してると言ってくれ」とせがむ。知られざる名シーンだ。
で、最後の最後に全身を現す植物人間。ウツボカズラとの合体生物で、なかなかグロくていいデザインだけど、「バロムワン」の怪人とかにこんなのいなかったか?という気がしなくもない。
そして我々「和の民」としては、ひょっとこを連想するいい顔なので、ちょっと親近感がわきます。



ひさびさに観た『バスケットケース』(82)。監督はドイツの巨匠(変態作家としてですが)、フランク・ヘネンロッター。
身体に奇形の兄を宿していた弟(けっこうイケメン)。彼らは分離手術で独立する。
兄は人間というにはあまりにもアレな肉の塊で、弟にはテレパシーで心を伝える。
弟は自分たちを離れ離れにした医者たちに復讐するために、バスケットケースに兄を入れて持ち歩いているのだ。
というか弟は心を完全に支配されているので、兄の怒りにつきあう形である。
「不思議ちゃんのバスケットケースには小動物が入っている」とはリリー・フランキー氏の説だが、本作のバスケットには奇形で凶悪な兄ちゃんが収納されている。
とにかく「おこりんぼ」かつ「かまってちゃん」。バスケットを開ける者は容赦なく傷つけ殺し、弟に彼女ができれば気に入らん!と殺害して「レイプのようなこと」までする(不覚にもここで爆笑)。
あまりにも短気なので、よく言われているような「フリークスの哀愁」は感じない。むしろ弟に同情します。
肉兄貴がものすごくちゃちいのはご愛嬌。しかし本作は創意工夫の映画なので、コマ撮りも駆使して兄貴の動きを見せるのだが、そこだけ画質が変わっちゃうのは微笑ましい。つまり「ハンドメイドってのは良いね」と言いたいわけです。
しかし分離手術を執刀した医者の一人が「獣医」ってのはすごくないか?




「カルト・ムービー」と呼ばれるものの多くは、普通の映画に比べて何かが欠けている。
それは「思いやり」とか「良心」だったりするのかも知れないけど、捨てたものがザックリしている分、ある意味で「豪快」である。
やましいのになんだか惹かれちゃうよねってことで、・・・ご同輩?(返事して!)。

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